整備日誌

(Dec. '96)


  1. スタータが重い.. (12/15)
  2. 絶対Elanで行くんだ! (12/21)
  3. 33年の歴史の重み (12/30)


'96 12/15 スタータが重い..

「何だか最近スタータ重いんだよねえ。 しかも毎回重いんならまだしも、回るときは勢いよく回るんだよ。 どっかの接触なんだろうけど、回っちゃうとわかんないし..。 おまけに下でカブるしさあ。もっともこれは前からだが..。 でもって、この真冬に水温上がるんだよ。信じられる? 去年の今頃はラジエター半分以上は塞いでたんだけど、今はちょっとだけ。 じゃないと渋滞とか乗り切れないんだ。電動ファン回してもあまり下がらない。 で、ちょっと走り出せば、今度はたちまちオーバークールだよ。 何だかちぐはぐっつうかさ、やだなあ、もう..。」

青蛙エレキ大臣にこんな愚痴を言いながら、 ガレージに着いたときには 時計はすでに15:00を回っていた。 楽しいはずのElanいじりも こういう状況だと、心なしか憂鬱である。

「最近は日が短いし、今日は色々やる時間はないかもなあ。」

ぶつぶつ言いながら、オイル、水等のいつもの点検を済ませ、 エンジン始動を試みる。

うん、うん、うん、うっ
「(ほらねー、重いでしょう?)」

うん、うん、うぅっ
「(おーい、しっかり回れよー。)」

うん、うっ、ばふっ、ぶすっ
「(おっ、かかるかな?)」

うん、うっ、ぼぼぼーんっ、ぶぼぼーん!
「(ほっ、かかってくれた。)」

エンジン自体は調子いいので、 スタータが多少元気なくても ある程度回ってさえくれれば、かかることはかかる。 で、かかってしまえばもうこっちのもの。 下でちょっとくすぶる気がするが、回せばよいだけのこと。(そうか?)

もっともLotusの場合、こんなことを考えられるのは 車から降りているときだけである。 シートに座り、アクセルを一踏みすれば全てを忘れて楽しんでしまう。 まさに忘却の実である。

試走がてらQED Japan(ちなみにこの日は休みだった)まで往復した後、 青蛙エレキ大臣の御意見をうかがってみる。

「うーん、とりあえずもう一度スタータ回してみてくれる?」

くるるるるるるるるるっ

「あれ? さっきより元気いいね。」

「そう。回るときはこのくらいは回るんだよ。 今、キョーレツ固いオイル(20w-60)入れてるから、 冷えてるときは回りにくいっていうのはあるけど、 それにしても差があり過ぎでしょう? 多分どっかの接触ってことだよね。 とにかく言えることは、スタータモータじゃないってことだよね? そうだよねっ? 頼むからそうだと言ってくれ! 今はスタータをオーバーホールする金なんて、どこにも無いんだ!」

「んー、そうだね..。 モータ弱ってる可能性もあるけど直接の原因じゃなさそう。 バッテリーはOKなんでしょ? 端子もOK? じゃあ、多分回路のどっかで接触悪くて、 それが抵抗になって電圧降下してるんじゃないかなあ? いずれにしろテスターで測ってみないと確実にはわからないから。 今日は時間ないし、今度ちゃんと測ってみないと。」

「その時はよろしくお願い、ね。」

いつもながら、青蛙エレキ大臣にはお世話になりっぱなしなのです。

来週はBritz-MLの忘年会兼ツーリング in 伊豆なんだけど大丈夫かなあ??? 心配だなあ..。


'96 12/21 絶対Elanで行くんだ!

さて、今日は待ちに待った? Britz-MLの忘年会兼ツーリング in 伊豆の初日。 待ち合わせは大観山(箱根)に14:00。それまでに整備をすませないといけないので、 何と7:00に起床! 仕事の日はこんな時間に絶対に起きられないのだが..。

でも寒かったので、9:30頃になってから作業開始。

時計は11:00を回ったところ。後は懸念のスタータが回れば完璧だ。 バッテリーも昨日買ってきたばかりの新品だし、ポイント、コンデンサも換えたし、 プラグも磨いたし、今日は暖かいし、これでかからなかったら嘘だよね? さーて、ここをひねれば「ぼぼぼーん」ってなるはず..、

うんっ.、うんっ、うぅ..
「(げげげげげげえっ :-O)」

そ、そんなばかな..。これじゃ先週よりもひどいじゃん。も、もう一度。

何度やっても結果は同じ。普段は何回かやれば回るときがあるのだが..。 とりあえず幹事さんの車に電話してElanを出せないかも知れない旨を伝えると、 Europa SplのTさんが30分後に通り掛けに私を拾ってくれるという。 うーん、残念だけど今回はElanで行くのは無理か..。

部屋へ帰って荷物の用意をすると、待ち合わせの時間まで後15分しかない。 歩いて約10分かかるから、Elanにカバーかけてもう出なきゃ間に合わない。

ぴかぴかのElanにEvo3カバーをかけていると、なんだか無性に悲しくなってきた。

「(Elanで行けないBritzオフミなんてつまんないよ..。)」

なんとなくElanのシートに座ってみた。 いつものように電磁ポンプのスイッチを入れ、ignition keyをひねってみる。

うんっ、うんっ、うんっ..、
「(やっぱり重い..。)」

数回やってみてもやっぱりだめだ。時間もないし、次で最後にしよう。

うんっ、うんっ、うんっ、ぼっ
「(か、かかるのか?)」

うんっ、うんっ、うんっ..
「(あちゃー、かぶったか..。)」

大急ぎで1番のプラグを外すと、電極がしっとり湿っている。 もう待ち合わせの時間を過ぎているし、初対面のTさんを待たすわけにはいかないし。 でも4本とも拭けば、もしかしたらかかるかもしれない。 どうしよう..。

「うーん、やっぱ決めた。絶対Elanで行くんだ。」

大急ぎでプラグを全て外して磨いた後、正真正銘最後のトライ。

うんっ、うんっ、うんっ、ぼふっ
「(かかるぞっ!?)」

うんっ、うんっ、うんっ..、
「(頼むっ、あと5回だけ回ってくれ)」

うんっ、うんっ、ぼふっ、
「(いまだっ! アクセルおーんっ)」

ぼっ、ぶぼぼぼーん、ぶぼーん

ふぅ、か、かかったあ..。

しかし、かかるにはかかったが、こんな車で伊豆まで行っていいのかなあ。 うーん..。ま、いっか、みんないるし。いざとなったら押してもらおう。

待ち合わせに遅れること15分。Tさんはまだ来ていなかった..。

心配した翌日の朝、ちょっと長めの、相変わらずのゆっくりしたクランキングの後に Elanは始動し、その後は特に問題もなくガレージに辿り着いた。

あーあ、いい加減こういう思いはしたくないなあ。 いよいよ来週は冬休みに突入だし、絶対今年中に直してやる..。


'96 12/30 33年の歴史の重み

さて、いよいよスタータ復活大作戦の始まり。 まずは青蛙エレキ大臣に手伝ってもらいながら、 各端子間の電圧を順に測定してみる。 バッテリー端子間の電圧は12.8V。 先週買ったばかりの新品だから、元気がよいのは当たり前である。

スタータの回りは相変わらず悪い。でもかえってチャンス、 これで接触悪い所が見つかるはず。 えーと、まずキルスイッチ..、ここ通ってリレーでしょ..、 リレー単体でも一応測っとくか..、でもってスタータで..、 フレーム..、ケーブルで終わりっと。 これを全部合計すると..、な、な、なにいー! スタータにたったの 9.8Vしか電圧かかってないじゃないの! そ、そんなあ、これじゃ回るはずないよ。 計算間違いじゃないよなあ?

再び測り直したり、まとめて測ってみたりしても、やはり合っている。 ちなみに合計約 2.8 Vの電圧降下の内訳は、

  1. バッテリのプラス端子 -> キルスイッチ出口 .. 0.5 - 0.6 V
  2. -> リレー出口 .. 0.5 - 0.6 V
    (リレーだけでは 0.3 V)
  3. -> スタータ入り口 .. 0.5 - 0.6 V
  4. スタータ出口 -> フレーム .. 0.8 V
  5. (自作の)アース .. 0.2 - 0.3 V

うーむ、これじゃ悪いところって言ってもなあ..、 要するに全部ではないかい?!

とは言え、キルスイッチの 0.6 Vはいくらなんでも大きすぎるということで、 外して分解を試みる。 Hella製のキルスイッチの左右のシャフト2本を抜き取ると、銅版が3枚現れた。 ノブを押し込んでひねると、 スプリングにより中央の銅版が他の2枚の銅版と圧着されて 導通する仕掛けになっているようだ。 接点を見ると、黒い酸化物がヘドロのようにこびりついている。 かなり固く、爪でこすったくらいではびくともしない。 各銅版には無数の磨き傷がついている。

「なるほど、これか。」

斜めに削れないように注意しながら、銅色に光るまでサンダーで接点を研磨し、 元通りに組み立てた。 そのまま再度取り付けてもよかったが、 とりあえず様子をみるということでキルスイッチを外した状態で結線し、 スタータを回してみる。すると案の定、

ぎゅるるるるるるるるるる..

と、もの凄い速さで回り出した。ふう、これで一応はOK。

しかし、これでもまだ電圧降下は約2Vもある。 しかも、どこもかしこも万遍なくといった状態で、 どこが原因かはっきりしない。 単純にどこかの端子が緩んでいるといったことではなさそうだ。 33年も経てば当たり前の劣化なのか? とりあえず次回は全ての端子を磨いてみよう。 これじゃ十分に充電されてるかも怪しいぞ..。

まだ時間があったので、買い置きしておいた永井電子さんのULTRA プラグコードと、 ついでに成田で熔けたディスビキャップの交換も行った。

プラグコードは、前期型のディスビ(Lucas 23D)用で差し込みタイプなので特注になった。 と言っても、端子の形状や長さ等の資料は永井電子さんのところにあったので、 電話1本で型を告げただけである。

料金は12,300円+消費税で、代引手数料と送料は永井電子さんもち。 性能を考えれば、非常にお買い得感がある。 納期は約2日で、色は赤かグレーを選べたが、 地味なエンジンルームでプラグコードだけ目立つのが嫌だったので、 グレーを選んでみた。

今回交換したディスビキャップは、無印製品である。 オリジナルのLucasと比べると、端子もcheapでちゃちな印象。 上面の"Lucas made in England"の文字がないのが、若干寂しい。

プラグコードを新しいディスビキャップにネジ止めし、 プラグとコイルに繋ぐ。 端子がかなり大きくて不格好なのが玉に傷だが、非常に満足だ。 グレーが渋い。

勢いよく回るスタータにより、エンジンはほんの数回転で目覚めた。 軽い暖気の終えた後、試走に出る。 すごい、こんなに違うのか..。 プラシボ効果などではない。 低回転でのピックアップが確かに改善されている。 ポイント、コンデンサ、ディスビキャップ、プラグコードが全て変わっているのだから、 何が効いているのかよくわからないが、そんなことはまあいい。 このまま気持ちよく走れさえすれば..。

各部の暖気が済むや否や、いつものように一鞭くれる。 ゴバァという吸気音と排気音が混ざり合った音とともに、回転が一気に跳ね上がる、 跳ね上がる、跳ね上がるはず..、あり? 跳ね上がらない。 何でこんなところでやめちゃうのさ? どうして???

ひとまずガレージへもどったものの、夜も遅いため今日の作業は中止。

「(3,200 rpmで息つき? メインでもつまったのかなあ..。)」


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Takahiro Asai (t_asai@yk.rim.or.jp)
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