いよいよ"英国車大運動会(富士サーキット)"当日である。 朝から霧雨が降っていたが、すでに払い込んだエントリー費がもったいないので 行けるところまで行ってみることにした。
ちなみにこの車には幌が付かない(注)。いや、正確には付けないと言うべきか。 少なくともまだ一度も付けたことはない。(二度ほど挑戦したが、途中で諦めた。) おそらく無理すれば付かないこともないと思うのだが、 幌骨を組み立てるのが面倒だわ、張ろうとするとあまりのキツさに指が痛くなるわ、 無理して引っ張るとAピラーの近辺がミシミシいい始めるわで、 付ける気にならないのである。
とはいえ、予報によると"今日は一日中雨で、ところにより強く降る"とのことなので、 気休めに幌一式をトランクに積み込み、雨避けのゴーグルをして出発した。
20分も走ると、霧雨は横殴りの雨に変わった。 キャビンはかなり濡れてきたが、車が少なく結構なペースで走れたので、 顔には雨がさほどかからず運転に支障はなかった。 しかしこれが一日続くとなると、かなりマズい。 あちら(富士サーキット)には屋根が無い。 残念だがこれ以上進むのは断念し、 Aさんの携帯に電話を入れて引き返す旨を伝える。 「あーあ、楽しみにしてたのに、残念だなあ..。」
Uターンするタイミングをさがしている間に、また雨が小降りになった。 「もしかして行けるかも?」と思いつつ走っていたら、 いけないと知りつつも、つい東名高速にのってしまった。 ところがのった途端にまたしても大雨。しかも今度のは半端ではなく、 バケツをひっくり返したようだ。 他車から指をさされて笑われるのは慣れっこだが、 ここまで強く降るとゴーグルではかなり視界が悪くなり危険である。 さらに案内版には「霧のため御殿場から通行止め」の非情な文字が..。
御殿場の出口は相当混んでいるとのことだったので、 とにかく大井松田で降りることにした。 すでに大井松田の出口も混みはじめており、降りてからも渋滞が続いていた。 30分ほど我慢して走ってみたが、御殿場に近付くにつれて渋滞ははさらにひどくなる。 また、低速ではもろに雨を受けるため、もはや全身ずぶ濡れで超寒い。 助手席や足元には水が溜っている。 無念だが、会場手前まで来て棄権である。 しばらく走ると屋根のあるガソリンスタンドを見つけたので、 缶コーヒーを買って少し体を暖めた後に、Uターンして帰路についた。
PS. なんと! このとき初めて幌をつけることが出来た。 (しかし外す時にハトメが壊れたので、今はもう付けることが出来ない。)
7日まで降り続いた雨はようやくあがった。 豪雨の中のドライブの後、水浸しのままカバーをかけてしまったので、 カビが生える前に急いで天干しである。
恐る恐るカバーを外してみると、水気はほとんど蒸発して乾いていた。 さすがはキンバリークラーク・エボリューション3(カバーの生地の名前)、 通気性は抜群である。
汚れた車体をとりあえず洗う。 ちなみにこの車は年に一度か二度しか洗車をしない。 ようするに雨の中を走るのは、年に一度か二度だけなのだ。 晴れの日だけ走る分には、 カバーをかける前に軟らかいウェスでホコリを払っておくだけで十分である。
言うまでもないが、旧車に水は大敵である。 (もっとも、水冷の場合は命でもあるのだが。) 洗車の際に残った水分は錆を誘発する。 いつでも綺麗な車に乗るのは気持のよいものだが、 何事も過ぎたるは及ばざるがごとし。 長く乗りたいなら洗車はほどほどにしておいた方が無難だ。 Lotusの車のほとんどはボディがFRPであるため錆とは無縁だが、 湿気はFRPを痛めるし、Lotusと言えどもフレームはしっかり錆びるので、 やはり洗車はほどほどにした方がよいように思う。 最近はGriod's garageなどから「水なし洗車」の用品なども売られているので、 こちらも興味のあるところだ。
今回は室内が水浸しになったので、こちらも入念に掃除した。 drop headのElanの場合、乾燥は非常に楽である。 日向に数十分も置いておけばすぐにカラカラ。 ただしクラッシュパッドは覆っておいた方がよい。
さて、洗車を終え一通りの点検を済ませたら、今日のメインイベント"フルトラ化"である。
接点式点火装置(いわゆるポイント式)の場合、定期的なメンテナンスが欠かせない。 ギャップの調整はもちろん、カムの潤滑、私のように懲り性だとドエル角まで測ったりするが、 Lotus T/Cの場合、ディスビはキャブの下にある為に狭いやら見にくいやらで、 これらの作業が非常にしづらい。 フルトラ(フルトランジスタ式点火方式)にすれば、 この部分は壊れない限り半永久的にメンテナンスフリーとなる。 また1次電流が増大することにより火花も強くなり、よいことこの上ない。 ここのところ特に"点火周り"のトラブルが多かったので、 いやがおうにも期待せざるをえない。
今回購入したのはAldon社のもの。 一応LumenitionとAldonのどちらかを、と考えていたのだが、
の2点が決め手となった。 おそらくは、私の周りの人のLumenitionにたまたまトラブルが起きただけなのだろう。 LumenitionはWAKOのCDIキットにも使用されているし、 海外のレースなどでもよく使われていて定評がある。 また、コイルや可変レブリミッタなどトータルでシステムを組むことができるのも魅力である。
インストラクションを読むと、取り付けはあっけないほど簡単だ。 まず従来のポイントを外してigniterを取り付け、2本のコードをそれぞれ1次コイルの+,-端子に繋ぎ、 マグネットロータをカムにはめ込むだけ。 他にトラブルシューティングのチャートが付属しているが、 こんなものは動かなかったら読めばいい。ポイっ。
まずはディスビを元通りに組めるようにマーキングしてから慎重に外す。 次にベースプレートを外して各部を清掃し点検。ガバナもこのとき潤滑しておく。
余談だが、何年か前にLoft渋谷店が輸入工具の取扱いをやめるときに、在庫一掃セールをやったことがある。 そのときにBahcoやHazetの工具をしこたま買い占めた(なんと70%引きの投げ売り状態だった!)のだが、 その中にポジのドライバがあった。しかし意外なことにElanにはポジのねじがあまり使われていない。 長い間、工具箱のこやしになっていたHazetのポジドライバは、今回ようやく日の目を見ることができた。 ベースプレートをディスビ本体に止めている2本のねじがポジだったのである。
ポイントを外してigniterを取り付け、配線が遊ばないように固定する。 思ったより工作精度がよく、特別な加工はしないで済んだ。 いささか拍子抜けである。 ベースプレートを付けて、カムにマグネットをはめ込んで、はい、終了。 マーキング位置を確かめてディスビをエンジンに取り付け、 シャフトにロータをはめて..、あり? ロータをはめて、む、む、む??
なんとなくロータをはめ込むときの感触がゆるいような気がする。 ロータをひっくり返すと裏側に板バネがあり、これの反力でシャフトに押しつけているのだが、 これが若干緩んでしまったようだ。マイナスドライバで少しバネを起こしてみると手応えがもどった。 「ははあ、なるほど。 さてはコイツが緩んでいたために、ロータがぶれてキャップの端子と接触していたんだな?」 バネが緩んだといっても、手で触ってロータのガタつきが分かるほどではないのだが、 さすがに高回転になればかなり振れることは想像に難くない。 とにかく原因がわかってホッとする。 これでやっと新品のディスビキャップとプラグコードも使えそうだ。
再びロータをはめてみるが、今度はちゃんと奥まで入っていないような気がする。 それもそのはず、マグネットロータがカムにかぶさるようになっているため、 上部の板の厚み分だけ手前で止まるのである。 なんとなく気持ち悪いが、一応爪はかかっているようなのでよしとする。
結線を済ませて取り付けは終了。
いよいよバッテリのマイナス端子を繋ぎ、スタータを回してみる。 ディスビが元通りに組んであれば、すなわち点火時期が合っていれば、 エンジンがかかるはずだ。
スタータを回してみるが、残念ながら動かない。 火がつきそうでつかない。回りそうだが、回らない。 そういった感じである。
「(ディスビは元通りに組んだはずなのに、変だな..。)」
直感的に点火時期が遅いと思ったが、 まだ時間も元気も余裕があったので、念の為TDC(上死点)を出してみることにした。 カムカバーを外し、 クランクプーリとカムスプロケットの合いマークから1番のTDCを出す。
(このときちゃんとチェックするべきだったのだが..)
ディスビを組むときにロータが時計方向に廻るので、 その分を考えながらロータがディスビキャップの1番を向くようにディスビを組み込む。
(このときロータの位置で気づくべきだったのだが..)
さてバッテリを繋ぎ、スタータを回す。
ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん!
「ひ、ひぇーっ。^^;」
なんとキャブが1気筒ずづ順番に爆発するではないか。 サイドドラフトのエアファンネルから順番に火が出る様は、 まるでカリブの海賊の砲台の様だ*注)。 こ、これは一体どうしたことだ..。
*注): カリブの海賊は水です :-)
冷静になって考えると、理由はすぐにわかった。 出したTDCが圧縮上死点ではなく吸気の開始だったのだ。(おいおい ^^;) 実はカムスプロケットの合いマークが180度ずれていて外向きに合わせるところを、 整備書通り内向きに合いマークを出してしまったのである。 気づくチャンスはいくらでもあったのに、 作業をナメていたため見逃してしまった。ひたすら反省である。
そんなわけで、もう一度TDCを出してやり直すと、 あっけないほど簡単にエンジンはかかった。 点火時期を14度@800rpmに合わせて、早速試走に出る。
「うーむ、すごい。これほど違うのか..。」 吹上がりは上までスコーンとスムーズ、 何よりアイドリングが長く続いても全くかぶる様子がないのには驚いた。 これなら渋滞でも全く問題ないかもしれない。
噂には聞いていたがフルトラ化は効果適面である。 これでメンテフリーだなんて言う事なし。 ちょっとしたトラブルはあったが取り付け作業も簡単。 大いに満足である。
約1年ぶりにオイル交換を行なった。 銘柄は前回と同様Castrol Classic 20w-50にした。 2回連続してこれを入れることになったが、 単に去年買い貯めしておいたものがまだ1缶残っていたからで、 特にこれが気に入っているわけではない。 旧車専用であることと、缶のデザインに惹かれて大枚はたいて買ったのが、 印象としては可もなく不可もなくといったところ。 冬場はさすがに固過ぎたので、 この一缶が終ったらCastrol RSにするつもりである。
以前からピョコピョコと動くだけで 全く役に立たなかったタコメータだが、 フルトラ化して全く動かなくなったのを機会に 修理(改造)に出すために外した。
後で元通り取付けられるように結線をメモし、 配線にも荷札を付けておいた。
修理は評判の高い世田谷の日本計器サービスさんにお願いするつもり。 さて、無事に動くようになりますか。
<- 整備日誌へ